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小说站 > 历史军事 > 嫌疑犯X的献身-容疑者Xの献身(日文版)

正文 第16节 文 / [日]东野圭吾

    湯川は草薙を見つめてきた。栗子小说    m.lizi.tw

    「その自転車が盗まれた場所というのを君は知っているのか」

    「そりゃ、知ってるよ。何しろ、俺が持ち主から事情聴取したんだからな」

    「じゃあ、お手数だけど案内してもらえないか。このあたりなんだろ」

    草薙は湯川の顔を見返した。何のためにそこまで、と訊きたかった。しかし彼はそれを我慢した。湯川の目が、推理を研ぎすます時に見せる鋭い光を放っていた。

    こっちだ、といって草薙は歩きだした。

    その場所は彼等が缶コーヒーを飲んだところから五十メートルと離れていなかった。自転車がずらりと並んでいる前に草薙は立った。

    「ここの歩道の手すりにチェーンで繋いであったそうだ」

    「犯人はチェーンを切ったのかな」

    「おそらくそうだろう」

    「チェーンカッターを用意していたということか」そういって湯川は並んでいる自転車を眺めた。

    「チェーンなんか、つけてない自転車のほうが多いじゃないか。それなのに、どうしてわざわざそんな面倒なことをしたんだろう」

    「そんなこと知らないよ。気に入った自転車に、たまたまチェーンが付いていた、というだけのことじゃないのか」

    「気に入ったか」湯川は独り言のように呟いた。「一体、何が気に入ったのかな」

    「おまえ、何がいいたいんだ」草薙は少し苛立ってきた。

    すると湯川は草薙のほうに向き直った。

    「君も知ってのとおり、僕は昨日もここへ来た。で、今日と同じようにこの周辺を観察した。一日中、自転車は置かれている。しかもかなりの数だ。きちんと鍵をかけてあるものもあれば、盗まれるのも覚悟といった感じの自転車もある。そんな中から、なぜ犯人は、その自転車を選んだのか」

    「犯人が盗んだと決まったわけじゃない」

    「いいだろう。被害者自身が盗んだと考えてもいい。どちらにせよ、なぜその自転車だったのか」

    草薙は頭を振った。

    「おまえのいいたいことがよくわからん。盗まれたのは、何の変哲もないふつうの自転車だ。適当に選んだのが、それだったというだけのことだろ」

    「いや、違うな」湯川は人差し指を立て、それを横に振った。「僕の推理をいおう。その自転車は新品もしくは新品同様の品だった。どうだい、違うかい」

    草薙は虚を突かれた思いだった。自転車の持ち主である主婦とのやりとりを回想した。

    「そうだった」彼は答えた。「そういえば、先月買ったばかりだとかいってた」

    湯川はそれが当然だという顔で頷いた。

    「だろうな。だからこそ、きちんとチェーンをかけていたし、盗まれたとなれば、早々に警察に届けたんだろう。逆にいうと、犯人はそういう自転車を盗むつもりだった。そのために、チェーンをかけてない自転車なんかいくらでもあるとわかっていながら、わざわざチェーンカッターを用意してきたんだ」

    「わざと新品を狙ったというのか」

    「そういうことになる」

    「何のために」

    「そこだよ。そんなふうに考えると犯人の狙いは一つしか見えてこない。犯人としては、自転車の持ち主に何としても警察に届けてほしかったんだ。それによって、犯人にとって何か都合のいいことが起きるからだと考えられる。具体的にいうと、警察の捜査を誤った方向に導く効果があるということだ」

    「自転車が盗まれたのは午前十一時から午後十時の間と判明したが、それが違っているといいたいわけか。小说站  www.xsz.twしかしだ、自転車の持ち主がどう証言するかは、犯人にはわからないじゃないか」

    「時間についてはそうだろう。しかし、自転車の持ち主が間違いなく証言することがある。それは、盗まれた場所は篠崎駅、ということだ」

    草薙は息を呑み、物理学者の顔を見つめた。

    「俺たち警察の目を篠崎駅に向けさせるための偽装だといいたいのか」

    「そういう考え方もできるだろ」

    「たしかに俺たちは篠崎駅周辺の聞き込みに人手と時間を割いている。おまえの推理が正しければ、それはすべて無駄ということか」

    「無駄ではないだろう。この場所で自転車が盗まれたのは事実なんだから。でも、そこから何かが掴めるほど、この事件は単純じゃない。もっと巧妙に、もっと精微せいちに組み立てられている」そういうと湯川は踵を返し、歩きだした。

    草薙はあわてて彼を追った。「どこへ行くんだ」

    「帰るんだよ、決まってるだろ」

    「ちょっと待てよ」草薙は湯川の肩を掴んだ。

    「肝心なことを訊いていない。おまえがこの事件に関心を持つ理由は何なんだ」

    「関心を持っちゃいけなかったかい」

    「答えになってないぞ」

    湯川は草薙の手を肩から振り払った。

    「僕は被疑者かい」

    「被疑者 まさか」

    「だったら、何をしようと勝手だろ。君たちの邪魔をしているつもりはない」

    「それじゃあいわせてもらうが、花岡靖子の隣に住んでる数学教師に、俺の名前を出して嘘をついただろ。俺があの男に捜査協力を頼みたがっている、とかいったそうじゃないか。その狙いを訊く権利はあるはずだぜ」

    湯川の目が草薙を見据えてきた。ふだんあまり見せたことのない冷徹な表情に変わっていた。

    「彼のところに行ったのか」

    「行ったさ。おまえが何も話してくれないからな」

    「彼は何かいってたか」

    「待てよ。質問しているのは俺のほうだぜ。あの数学教師が事件に絡んでいると思うのか」

    だが湯川は答えず、目をそらした。そして再び駅に向かって歩きだした。

    「おい、待てったら」草薙は背中に呼びかけた。

    湯川は立ち止まり振り返った。

    「君にいっておくが、今回にかぎっては、全面協力というわけにはいかない。僕は個人的な理由で事件を追っている。僕には期待しないでくれ」

    「だったら俺も、今までみたいに情報提供するわけにはいかないぜ」

    すると湯川は一旦視線を落とした後、頷きかけてきた。

    「それならそれで仕方がないな。今回は別行動ということにしよう」そういって歩き始めた。その背中には強い意思が示されていた。草薙はもう声をかけなかった。

    煙草を一本吸ってから草薙は駅に向かった。時間を潰したのは、湯川と同じ電車に乗らないほうがいいだろうと判断したからだ。理由はわからないが、今回の事件には湯川の個人的な問題が関わっており、彼はそれを一人で解決しようとしている。その思考の邪魔をしたくなかったのだ。

    地下鉄に揺られながら草薙は考えた。湯川は何を悩んでいるのか。

    やはりあの数学教師のことだろう。名前は石神といったはずだ。だが草薙たちのこれまでの捜査では、石神のことなどどこにも浮かび上がってきていない。栗子网  www.lizi.twただ花岡靖子の隣人というだけのことだ。それなのになぜ湯川が彼を気にするのか。

    草薙の脳裏に、弁当屋で見た光景が蘇った。夕方、湯川は石神と現れた。石神によれば、湯川がべんてん亭に行きたいといいだしたそうだ。

    湯川は無意味なことをわざわざする人間ではない。石神と共にあの店に行ったのは、何らかの狙いがあったからなのだ。それは一体何か。

    そういえば、あの直後に工藤が現れたのだった。しかし湯川がそのことを予期していたとは思えない。

    草薙は何となく、工藤から聞いた様々な話を思い出していた。彼の話の中にも石神のことなど出てこなかった。というより、誰の名前も出さなかった。工藤は、はっきりとこういったのだ、自分は告げ口をしない主義だ、と。

    その瞬間、何かが草薙の頭に引っかかった。告げ口をしない主義――その台詞が出たのは、どういう話をしていた時だろう。

    「彼女に会いたくて弁当を買いに来る客だっているそうですよ」苛立ちを抑えながらそういっていた工藤の顔を思い出した。

    草薙は大きく息を吸い込み、背中をぴんと伸ばした。向かいに座っていた若い女性が、気味悪そうに彼を見た。

    草薙は地下鉄路線図を見上げた。浜町で降りよう、と思った。

    ハンドルを握るのは久しぶりだが、走り始めて三十分もすると、運転自体には慣れてきた。ただし、目的の場所で路上駐車するのには少し手間取った。どこに停めても他の車の迷惑になるような気がするからだった。幸い、どこかの軽トラックが無造作に駐車したので、そのすぐ後ろに停める決心がついた。

    レンタカーを借りたのは二度日だった。大学で助手をしていた頃、学生たちを連れて発電所の見学に行った際、現地を移動するのにどうしても必要で、やむなく借りたのだ。あの時には七人乗りのワゴン車だったが、今日は国産の小さな大衆車だ。だから運転はずいぶんと楽だ。

    石神は斜め右側の小さなビルに目を向けた。有限会社ヒカリグラフィックの看板が出ている。工藤邦明の会社だ。

    この会社を探り当てるのは、さほど難しいことではなかった。刑事の草薙から、工藤という名字と、印刷会社を経営しているという手がかりを得ていたからだ。石神はインターネットを使い、印刷会社のリンク集が載っているサイトを見つけると、東京の会社を片っ端から調べていった。

    経営者の名字が工藤なのは、ヒカリグラフィックだけだった。

    今日、授業が終わると、石神はすぐにレンタカー会社に出向き、事前に予約しておいた車を借りた。それを運転して、この地にやってきたのだった。

    レンタカーを借りることには、無論、危険が伴う。あらゆる意味で証拠が残ってしまうからだ。しかし彼は熟考を重ねた末に行動に出たのだった。

    車に備え付けられているデジタル時計が午後五時五十分を示した時、ビルの正面玄関から数名の男女が出てきた。その中に工藤邦明の姿があるのを確認し、石神は身体を固くした。

    彼は助手席に置いてあったデジタルカメラに手を伸ばした。電源を入れ、ファインダーを覗いた。工藤に焦点を合わせ、ズームを上げた。

    工藤は相変わらず、垢抜けた服装をしていた。石神には、どこに行けばそういう服が売られているのかさえもわからなかった。靖子が好むのはこういう男なのか、と改めて思った。靖子だけではない、世の中の多くの女性が、自分と工藤のどちらかを選べといわれたなら、間違いなく彼を取るだろうと石神は思った。

    嫉妬心に駆られつつ、彼はシャッターを押した。ストロボは光らないように設定してある。それでも液晶画面には、工藤の姿が鮮やかに写されていた。まだ日は高く、周囲は十分に明るいからだ。

    工藤がビルの裏手に回った。そこに駐車場があることはすでに確かめてあった。石神は車が出てくるのを待った。

    やがて一台のベンツが出てきた。緑色だ。運転席に工藤がいるのを見て、石神はあわててエンジンをかけた。

    ベンツの後部を見ながら、彼は車を走らせた。運転自体が慣れていないのに、尾行するのは容易ではなかった。すぐに間に他の車に入られてしまい、見失いそうになる。特に信号の変わり目は難しい。だが幸い工藤は安全運転だった。スピードを出しすぎることもないし、信号では黄色できちんと停止する。

    むしろ、あまり近づきすぎて気づかれるのではないかと不安になった。しかし尾行をやめるわけにはいかない。最悪のケースとして、相手に気づかれることも石神の頭にはあった。

    運転しながら石神は、時折カーナビに目をやった。地理にはあまり詳しくないからだ。工藤のベンツは品川に向かっているようだった。

    車の数が増え、追尾するのが徐々に難しくなってきた。少し油断している間に、トラックに入られた。おかげでベンツの姿はまるで見えなくなった。おまけに、車線を変えようかどうか迷っている間に、信号が変わった。トラックが先頭のようだ。つまり、ベンツは走り去ったということになる。

    ここまでか――石神は舌打ちをした。

    だが信号が青になって再び走りだして間もなく、次の信号で右折のウインカーを出しているベンツが目に入った。間違いなく工藤の車だった。

    道路の右側にはホテルが建っている。工藤はそこに入るつもりらしい。

    石神は躊躇わず、ベンツの後ろについた。怪しまれているかもしれないが、ここまでついてきたからには引っ込みがつかない。

    右折信号が出ると、ベンツが動きだした。石神もついていく。ホテルの門を入って左側に、地下へと続くスロープがある。駐車場への入り口らしい。ベンツに続いて、石神もそこへ車を滑り込ませた。

    駐車場のチケットを取る時、工藤が小さく振り向いた。石神は首をすくめた。工藤が何かに気づいているのかどうかはわからない。

    駐車場は空いていた。ベンツはホテルへの入り口に近い場所に停まった。石神はそこからかなり離れたところに車を停めた。エンジンを切るや否やカメラを構えた。

    工藤がベンツから降りた。そのシーンでまずシャッターを押した。工藤は石神のほうを気にしている。やはり何か疑っているようだ。石神は頭をさらに下げた。

    だが工藤はそのままホテルの入り口へと向かった。彼の姿が消えるのを確認してから、石神は車を発進させた。

    とりあえず、この二枚だけでもいいか――。

    駐車場にいた時間が短かったため、出口のゲートをくぐる時に料金は請求されなかった。石神は慎重にハンドルをきり、細いスロープを上がっていった。

    この二枚の写真に応じた文面を、彼は考えていた。頭の中で組み立てた文章は、大体次のようなものだった。

    貴女が頻繁に会っている男性の素性をつきとめた。写真を撮っていることから、そのことはおわかりいただけると思う。

    貴女に訊きたい。この男性とはどういう仲なのか。

    もし恋愛関係にあるというのなら、それはとんでもない裏切り行為である。

    私が貴女のためにどんなことをしたと思っているのだ。

    私は貴女に命じる権利がある。即刻、この男性と別れなさい。

    さもなくば、私の怒りはこの男性に向かうことになる。

    この男性に富樫と同じ運命を辿らせることは、今の私には極めて容易である。その覚悟もあるし、方法も持っている。

    繰り返すが、もしこの男性と男女の関係にあるのならば、そんな裏切りを私は許さない。必ず報復するだろう。

    石神は組み立てた文章を口の中でぶつぶつと復唱した。威嚇いかく効果があるかどうか、吟味した。

    信号が変わり、ホテルの門をくぐろうとしたその時だった。

    歩道からホテルに入ってくる花岡靖子を見て、石神は思わず目を剥いていた。

    12

    靖子がティーラウンジに入っていくと、奥の席で手を挙げる者がいた。ダークグリーンのジャケットを着た工藤だった。店内は三割ほどの席が埋まっている。カップルの姿もあるが、商談を交わしている様子のビジネスマンが目についた。その中を、やや俯き加減にして彼女は歩いた。

    「急に呼び出して悪かったね」工藤は笑顔でいった。「とりあえず何か飲み物でも」

    ウエイトレスが近づいてきたので、靖子はミルクティーを注文した。

    「何かあったの」彼女は訊いた。

    「いや、大したことじゃないんだが」彼はコーヒーカップを持ち上げた。だがそれに口をつける前にいった。「昨日、僕のところに刑事が来た」

    靖子は目を見張った。「やっぱり」

    「僕のことは、君が刑事に話したのかい」

    「ごめんなさい。あなたと前に食事をした後で刑事がやってきて、誰とどこにいたのか、しつこく訊かれたの。それで、黙っていると余計に変に疑われると思って」

    工藤は顔の前で手を振った。

    「謝ることはない。別に貴めてるわけじゃないんだ。これからも堂々と会うためには、刑事たちにも我々のことを知っておいてもらわなきゃいけないから、かえってよかったとさえ思っている」

    「そうなの」靖子は上目遣いに彼を見た。

    「ああ。しかし、当分はおかしな目で見られることになるだろうがね。さっきも、ここへ来る途中、尾行された」

    「尾行」

    「最初は気がつかなかったんだけど、走っているうちにわかったんだ。同じ車がずっと、僕の後ろを走っていた。気のせいではないと思うよ。何しろ、このホテルの駐車場までつけてきたんだから」

    何でもないことのように話す工藤の顔を靖子は凝視していた。

    「それで その後は」

    「わからない」彼は肩をすくめた。「遠くだったから、相手の顔はよく見えなかったし、いつの間にかいなくなった。じつをいうと、君が現れる前から、こうして周りを見回しているんだけど、それらしき人間はいないみたいだ。もちろん、こっちの気づかないところから監視しているのかもしれないけど」

    靖子は顔を左右に動かし、周囲の人々の様子を窺った。胡散うさん臭い人間は見当たらない。

    「あなたのことを疑っているのね」

    「君が富樫殺しの首謀者で、僕がその共犯だというシナリオを描いているらしい。昨日来た刑事は、露骨にアリバイを訊いて帰ったよ」

    ミルクティーが運ばれてきた。ウエイトレスが立ち去るまでの間、改めて靖子は自分たちの周りに視線を配っ

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